もし全てのクリエイターに核心があるとすれば、Stephen(スティーブン) 馮德倫(フォン・ダクルン、@stephenfungible)の場合、その核心は単一の定義にとどまりたくないという流動性だろう。1990年代のバンド「Dry」のギタリストから俳優、映画監督、そしてアニメキャラクター・IPクリエイターへと転身してきた彼の人生は、まるで次々とシーンを切り替える映画のようだ。しかし、そのレンズは常にひとつの視点、すなわち「物語を語ること」に焦点を合わせている。
今回は、赤いバケツを被った少年のキャラクターを通して、新たな宇宙を創り出すことを選んだ。
『BUCKET MAN』は単なるキャラクターデザインではなく、香港、成長、「ファーストマネー(第一桶金)」にまつわる寓話である。このキャラクターがComplexCon(複合型クリエイティブイベント)で、HSBC One+(香港上海銀行の若者向け商品)とのコラボにより、高さ4メートルの巨大な金色のバケツを体験できるスペースを展示したことで、香港の一般的な家庭用品である「Red A バケツ」が単なる日用品から、この都市を象徴する精神的なシンボルへと昇華したのだ。ZTYLEZと共に、馮德倫が創り出した複数の宇宙観と『BUCKET MAN』の冒険宣言を紐解いていこう。

Z:ZTYLEZ
S:Stephen Fung Tak Lun
Z:歌手、俳優、監督、そしてアニメクリエイターといった多面的なキャリアを持っていますが、最初に芸能界に入った頃から、音楽を目指していたのですか?また、これらの異なる役割は何らかの繋がりを持っていますか?
S:はい、幼い頃からギターを弾くのが好きだったので、夢はバンドを組んで音楽活動をすることでした。運よく雷頌德(マーク・ロイ)さんという恩人と出会い、意気投合して「Dry」というバンドを結成しました。そして歌手として正式にデビュー、その後CMや映画を通じて自然に俳優や監督へと転身しました。ただし、根幹にあるのは常に「異なるメディアを通じて物語を語ること」です。また、私は大学でグラフィックデザインを専攻していたため、俳優や監督として映画を制作する場合でも、現在のアニメ制作をする場合でも、視覚的な要素が創作の出発点となっています。異なる役割同士がシナジーを持ち、私を新たな可能性探索へと突き動かしています。

Z:作品が映画からSNS、漫画、デジタルアートまで様々なメディアとプラットフォームを横断していますね。異なる芸術形式の間を行き来するとき、どのようにして創作思考を調整していますか?また、現在の自分を最もよく表現する芸術形式は何だと思いますか?
S:各芸術形式には独自の言語と個性があり、それに応じて表現方法を調整しています。創作の根底にある思考方式は似ていますが、表現方法は異なります。現時点で私を最もよく表現する方法としては、アニメだと思います。おそらくアニメは、非現実的な物語やビジュアルを自然に描ける上に、少しの童心も持ち合わせているからです。
Z:なぜアニメの創作に取り組むという発想が生まれたのでしょうか?
S:最初は、あるデジタルアート作品を見てインスピレーションを得ました。その作品の主人公が赤いバケツを頭に載せた子供で、見た瞬間「これだ!」と感じました。これまでずっとスーパーヒーローのストーリーを創作したいと思っていましたが、そのバケツを見て、香港で象徴的な意味を持つこのバケツをテーマにしたら面白いスーパーヒーローの物語を作れるのではと思い立ち、すぐに『BUCKET MAN』の制作を始めました。アニメ制作には時間がかかりますが、全ての条件が揃うのを待たず、まずキャラクターのビジュアルイメージを発表し、その後ストーリーを徐々に広げていくという方法を取りました。これはかつて『He-Man and the Masters of the Universe』がビジュアルから始まり、後にストーリーが展開していったアプローチに似ています。

Z:『BUCKET MAN』の構想について詳しく教えていただけますか?
S:主人公の頭上に置かれる赤いバケツは、香港の日常生活で頻繁に見られる「Red A バケツ」を連想させます。これは香港を象徴する文化の一部であり、多くの人々に馴染み深いものでしょう。1960年代の断水時代や、現在も茶餐廳(香港式喫茶店)や市場に見られるなど、人々に文化的な共鳴をもたらします。『BUCKET MAN』には従来のようなスーパーパワーはないものの、彼には香港人が持つ特質——粘り強さ、柔軟性、冒険的な精神が反映されています。
Z:アニメIPと金融ブランドは、一見接点がないように思えます。今回のHSBC One+とのコラボはどのように始まり、どのような関連性を見出したのでしょうか?
S:アニメの主要な視聴者とHSBC One+の顧客層の多くは若者であり、この組み合わせは非常にフィットします。また、BUCKET MANの「バケツ」とHSBC One+が提唱する「ファーストマネー(第一桶金)」というコンセプトも自然と響き合いました。BUCKET MANは挑戦を恐れず、困難に立ち向かうキャラクターであり、HSBC One+が伝えたいメッセージにもぴったりです。主人公がスーパーヒーローでありながら、困難に直面するという点を強調することで、視聴者が彼に自身を重ね、HSBC One+の製品やサービスがそのような挑戦を支える存在であると感じられるようにしました。物語を軽やかに伝えるのが好きなので、今回のコラボでも日常的な「金融」を手軽に、そして視覚的に伝える方法を模索しました。

Z:前回、『BUCKET MAN』とHSBC One+がGrade10 Festival 2025で限定カードをリリースし話題を呼びましたが、今回はどのような新たな要素を加えたのでしょうか?
S:前回は限定カードリリースで大きな反響をいただき、非常に嬉しく感じました。今回はComplexCon香港2026でのコラボとして、金メッキ仕様の限定版フィギュアを発表するとともに、プロの評価機関から満点評価(CGC10)が付いた限定カードの展示も行いました。これらの製品は、BUCKET MANのファンだけでなく、トレーディングカードを愛する多くの新世代消費者の興味を引くものでした。

Z:現代のクリエイターは、SNSやデジタルプラットフォームといった発展するテクノロジーの中で、過去と比べてどのような利点や課題に直面していると考えますか?
S:昔はクリエイターが機会を待たなければならなかった一方で、今のSNS時代では若い世代が主体的にチャンスを作れるようになりました。態度と思いがあり、発信できるストーリーがあれば、様々なプラットフォームで自分を表現し、共感を生むことができます。ただし、参入障壁が低くなったぶん競争は激しくなっており、独自の道を見つける必要があります。

Z:最後に、『BUCKET MAN』とHSBC One+のコラボレーションが伝えたいメッセージについて教えてください。夢を追いかける人々へのメッセージもぜひ。
S:一歩を踏み出し、周囲のリソースを活用すれば、ファーストマネーや夢を実現することは遠いものではありません。『BUCKET MAN』はスーパーヒーローでありながらも挑戦に直面し、粘り強さと道具を活用して柔軟に対応するキャラクターです。観客にも『BUCKET MAN』のようにツールのサポートや導き手を得て、ファーストマネーを掴む道を切り拓いてほしいと願っています。


