謝安琪(しゃあんき / ケイ)は人生を読むことは長い旅だと語る。航海の比喩で始まる取材の冒頭で、彼女は荒波と静寂の往復が人を変えると述べた。
浦銘心という架空の女性を演じることで、謝安琪は自分の表現の幅が変わったという。17歳での出会いと別れ、再会を経る物語が歌と映像で3年かけて描かれてきた。
二つの世界を行き来する表現
「私の中に浦銘心がいるのか、浦銘心の中に私がいるのか」と謝安琪は言う。役と自分の境界が創作の核になったという。
謝安琪は映像表現を好み、撮影で見せる佇まいの違いにこだわる。本人は普段、さっぱりとしてユーモアのある性格だが、浦銘心はそうではないと笑って語った。
黒と白という対照は見た目の美学ではなく、生活の色彩の違いを示す。謝安琪は浦銘心の「灰暗さ」に惹かれ、その中にある静けさを日常で憧れるものだと説明した。

孤島のような強さと脆さ
浦銘心は激しく愛し、30歳を前に現実の生活に苦しめられる人物だ。謝安琪はその人物像を「孤島」のようだと語る。
「彼女は一人で全てに向き合える」。謝安琪は浦銘心の芯の強さを強調した。しかしその強さが執着となり、傷の源にもなっていると続けた。
同じく結婚や家庭を持つ彼女は、執着を手放すことが自分を許すことであると理解している。演じることで学んだ自己の整理が、謝安琪の変化に繋がった。

役を通して広がる視点
謝安琪はこれまで、自分の内面を深く掘り下げた曲を歌うことは少なかったという。浦銘心を通じて初めて、情感の細部を歌に落とし込めるようになった。
Juno(ジュノ)による企画は狂想的な要素を与え、プロジェクト全体を生きた物語にした。歌詞やMV、テキストを通して浦銘心の心情が3年かけて浮かび上がる。
演出の一部は昨年のコンサートにも取り入れられた。単なるキャラクター表現にとどまらず、「自分を読む」「人生を読む」というテーマが創作の核にあると謝安琪は説明する。
もし浦銘心が一つの物語なら、謝安琪自身の人生は夕陽を眺める旅だと彼女は言う。どんな環境にいても、歩みを止めて美しさに気づく瞬間があるという。

舞台演出と創作チームの信頼
衣装や楽曲構成、歌唱のニュアンスまで、浦銘心の世界観は細部にわたり考えられた。謝安琪は演出側としても初めての経験を重ねた。
彼女は、この企画が一貫して同じチームで進められたことを強調する。チームの忍耐と創造性がなければ成し得なかったと謝安琪は感謝を述べた。

役と歌唱で見つけた自由
ある離婚後の爆発的な場面の撮影では、謝安琪は感情が収まらず一晩中涙したという。その本気の表現が、歌の表現を根底から変えた。
かつては音色や技巧を重視していたが、浦銘心を経て彼女は感情を最優先にするようになった。舞台で「自由に歌える」感覚は出発以来の大きな収穫だと語る。

「感謝を込めて、浦銘心へ」
「今の私は、自分を読むことに熱心だ」と謝安琪は静かに語った。新曲「三生一吻」が50歳を迎えた女性の恋を描き、今年末にこの企画は完結する予定だという。
彼女は次に、さらに深い海底の世界へ踏み込む意欲を見せる。これからは「謝安琪」としての人生を共有する創作が主軸になるという。

「私は今も自分が好きだ」と彼女は言う。自己観察と自己対話を続けることが、彼女の今後の創作テーマになる。
Producer: Vicky Wai
Photographer: Simon C.
Videographer: Kero
Styling: Vicky Wai
Make Up: Kris Wong
Hair: Sing Tam @pi4.hk
Lighting: Chris
Video Editor: Jerman So
Editor: Carson Lin
Designer: Tanna Cheng
Wardrobe: Valentino


