郭彥甫は台湾出身の画家で、香港で初個展『矚目』を開催した。台北の制作現場で語った創作の原点と近作の狙いを取材した。
かつて芸能活動で広く知られた郭彥甫は、表舞台を離れ絵画に専念する道を選んだ。郭彥甫は演者やモデル、司会者としての過去を否定せず、複数の経験が現在の制作に寄与していると語る。
2015年に制作に重心を戻し、旅先での体験をもとにした《行李箱》シリーズで注目を集めた。その後も《運動員》シリーズなど新作を発表し、海外のコレクターにも収蔵されている。

制作現場で聞いた創作への志向
台北にあるアトリエを訪ねると、絵具と習作が散らばる空間が広がっていた。郭彥甫は普段着で落ち着いており、制作を人生の一部と表現した。
彼は「絵を描くことは子供の頃からの習慣だ。思想の成熟が長くかかった」と語った。芸能活動は経済的余裕をもたらした一方、創作の本質は別にあると述べる。

思想と自己理解が制作の核
郭彥甫は、自身の制作が思想の内面化であると説明した。体育出身で短距離走の経験があることが、逆説的な思考を育んだという。彼は絵画を通じて自分を検証する習慣があると述べた。
演技やモデル業を続ける一方でも、日々スケッチを重ねることで世界観を構築した。速写や挿画がページを埋める過程が、現在の表現へと繋がっている。

理性としての芸術観と影響
郭彥甫は芸術を「哲学に近い理性的な行為」と捉える。ひらめきや気まぐれではなく、論理的な問いかけの繰り返しが作品主題を形作ると述べた。
刺激的な着想源は偉大な巨匠ではなく、むしろ日常の逆説的思考だと語る。例として愛因斯坦の時間論を挙げ、喜びと苦痛で時間感覚が変わる点を創作の糧にしている。

スポーツ経験が生む表現
運動選手としての過去は、作品の重要なモチーフだ。《運動員》シリーズでは競技中の一瞬を切り取り、身体の消耗や緊張感を画面に定着させている。
彼は「運動場は人生の比喩だ」と語る。選手の表情を曖昧に描くことで、観客が場の雰囲気に没入することを意図している。

展覧会『矚目』と香港での意味
新年に香港のWKM Galleryで開催された個展『矚目』は、郭彥甫にとって意義深い舞台だ。展示は約3か月にわたり、近年の運動員と映画を主題とした作品を中心に構成された。
郭は子どもの頃、家業の影響で香港映画のビデオを見て育ったと話す。香港で初めて個展を開くことに対し深い感慨を示した。

香港のギャラリー運営に対する評価
彼は香港のギャラリーが国際的な専門性を備えている点を評価した。展示の準備段階での詳細なコミュニケーションや3D図面の提示などが、プロフェッショナルな運営を示しているという。
香港は西洋思想を受け継ぎつつ国際舞台に接続しているため、表現の発信に適した環境だと述べた。

郭彥甫香港個展 『矚目』
WKM Gallery
住所:香港 黃竹坑道62號 科達設計師中心20階(黃竹坑、Wong Chuk Hang地区)
会期:2024年1月20日〜2024年3月2日
Interview & text: Kary Poon
Photographer: Wei


