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タイソン・ヨシが語る創作と表現の原点

「タイソン・ヨシをどういう人物だと表現しますか?」

「私は、まさにこんな人間だよ。いつも人に言っているんだ『僕はただの普通の人間だ』って。自分で背負い切れないキャラクターを無理に作るのは好きではないから、最初の頃から自分を隠して、ネットに一曲また一曲と投げていったんだ」

創作の基盤は、アイデアと表現という構築だけではなく、自分と向き合うこと、その真実性こそが大きな原動力である。

灰色の髪、屈強な体つき、両腕に入った伝統的なタトゥー、そしてセンスのある服装。ここ数年で注目を集める若手のラッパー兼シンガーソングライター、タイソン・ヨシ(Tyson Yoshi)は、世間が抱くラッパー像にぴたりと合致するかもしれない。だが彼は大手レコード会社の支援を受けず、自室の簡素な機材で編曲・作詞・録音を行い、映像プラットフォームに作品を上げることで注目を得てきた。

デビュー曲『To My Queen』、代表曲『Christy』、人気曲『I Don’t Give A Part II』『Growing Up』、新曲『i don’t smoke & i don’t drink』などを通じて、タイソン・ヨシの音楽には定義や固定された様式はなく、純粋な創作衝動だけが漂っている。

創作の核とプロセスを重視するタイソン・ヨシ

英国留学から帰国後の2017年、タイソン・ヨシはネット上で独学でミックスを学び、作詞を始めた。経験は浅かったが、2年で自らのラップ曲を次々と発表し、表現の幅を広げていった。

R&Bやポップをヒップホップに取り込む手法で独自のスタイルを築き、台湾や香港のリスナーの耳に刻まれた。代表作『Christy』はストリーミングで1,507万回を超える再生を記録している。

創作で重要なのは過程だと彼は語る。完成品が出た時点ではすでに次へ進んでおり、最も刺激的なのは形成の過程そのものだという。

タイソン・ヨシ ポートレート

独立した制作による完全な自由は、同時に迷いの源にもなり得るかと問うと、彼は「繰り返したくない」と答えた。自分を複製するような『Christy 2.0』を作る理由はないからだ。

彼にとって創作は「無」から「有」へと変わる体験であり、組み替えや分解を通じて形になる過程が楽しい。さらに、メッセージ性が重要だとも語った。目的意識があるからこそ、表現にぶれが出ないという。

言語と表現の選択

なぜ彼は広東語で曲を作ることが少ないのか。理由は母語としての距離感にあるという。広東語は良し悪しが明確にわかるため、自ずと規則で自分を縛ってしまうのだ。

「広東語だと直接的になり過ぎる瞬間があるから、直接さが美しくないと感じたら英語に切り替える」とタイソン・ヨシは説明する。英語にすることで、観客の顔面に強い表現を投げかけることができるという。

タイソン・ヨシ スタイリング写真
Mechanical Bust Armor, PMS Metallic Palazzo Trousers and Constructive Gauntlets, from Angus Tsui

感情の揺れが創作の引き金になることも多い。怒りやネガティブな感情の方が強く残るため、歌詞を書く素材としては扱いやすいと彼は言う。書くことで自分を知る過程が進み、表現が自己理解につながるのだ。

歌を書くことは自己探求である

タイソン・ヨシは、創作を続けるうちに自分を深く理解するようになったと話す。題材を決めて書き進めるうちに、自分が本当に気にしていることが見えてくるからだ。

作品群には重厚な人生論は少なく、恋愛観や成長などごく私的な主題が多い。だが創作ペースを維持した結果、いわゆるスランプに陥った経験もある。

彼は当時、自分に時間を決めて毎日書くルーティンを課したが、それが合わずに自信を失った。結局「やめるべきだ」と判断して創作の仕方を見直したという。

タイソン・ヨシ レコーディング風景

自己理解が深まるほど思考は明瞭になり、進むべき道も見えやすくなるという。大学で学科選びの際に自分の欲するものをはっきり自覚した経験が、その後の指針になっていると彼は振り返った。

アートとの対話と佳士得のコラボレーション

今回の撮影では、草間彌生(やよい・クサマ)、空山基(そらやま はじめ / Hajime Sorayama)、Avery Singer、Nicolas Partyといった現代作家の作品を美術方向に選び、タイソン・ヨシの個性と照射させる試みを行った。

彼はAvery Singerの《Untitled》を見てまず「この絵は何を語っているのか」と想像を巡らせた。細部から得られる手掛かりを頼りに、背景や物語を読み取りたいという欲求が湧くという。

Nicolas Partyの《Still Life》を見ては「なぜ野菜を描くのか」「色使いが目を引く」と率直に語った。作品の背後にある概念を知ると、解釈がまったく変わることを彼は強調した。

タイソン・ヨシと現代アート作品の撮影

アートは「人とつながるための媒体」だと彼は締めくくる。自身が作品を作る側でもあり、解釈者として作品に触れることで得る感覚は濃密であると語った。

あるファンはタイソン・ヨシの曲を中学時代に聴いても何も感じなかったが、大学で失恋を経験して再び聴いた時に泣いたと話してくれた。それが「clickした瞬間」だと彼は嬉しそうに語った。

主流への反転と創作の位置づけ

「私は大衆的、伝統的、主流の反対方向へ進みたい」とタイソン・ヨシは明言する。主流で名を上げることは、むしろ自分の信条を実践する好機になったと認める。

彼は創作が生活の一部になっていると語る。食事をするときに創作のことばかり考えているわけではなく、日常の中に創作が溶け込んでいるのだという。

タイソン・ヨシ 公演シーン

創作が彼の「凌駕するもの」になっているかとの問いに、彼は「創作はすでに自分の一部だ」と答えた。常に新しいアプローチを探し、香港でまだ試されていない表現を模索している。

影響と遺産についての思索

草間彌生のように、同じ要素を長年にわたり執拗に磨き続ける作家の姿勢を例に、タイソン・ヨシは自身の死後にどのように記憶されたいかを考えた。

「影響力が残るならそれで十分だ。もし良い影響であればなおさらだ」と彼は言う。スタイルで伝説になりたいかとの問いには、さほどこだわりを見せなかった。

タイソン・ヨシ スタイリング写真2
Blue Jacket and Blue Pants, from Louis Vuitton / Blue Sweater, from Maison Margiela / Red Shoes, from Givenchy

現在、彼は英国で『Hi I’m Back』ツアーを行っており、8月に香港でのワンマン公演を予定しているとSNSで予告した。香港での発表を待ちたい。

また、今回の撮影で取り上げた作品は、5月21日から28日にかけて香港會議展覽中心(香港コンベンション・アンド・エキシビション・センター)で行われる佳士得(Christie’s)2022年春季オークションのプレビューで見ることができる。5月は香港で複数の大規模アート展が開かれる「アート月間」である。

撮影現場イメージ

創作者にとって重要なのは、アイデアと感情を通じて他者と結びつく力であると彼は繰り返す。思考が多すぎれば束縛も増えるが、創造する勇気はいつでも価値があると締めくくった。

スタッフ:
エグゼクティブプロデューサー:Angus Mok
プロデューサー:Vicky Wai
撮影:Olivia Tsang
ビデオ撮影:Andy Lee、Angus Chau
スタイリング:Vicky Wai
メイク:Carmen Chung
ヘア:Jim Tse
ビデオ編集:Andy Lee
編集:Carson Lin
デザイン:Edwina Chan
衣装提供:Angus Tsui、Louis Vuitton、Givenchy、Maison Margiela
アートワーク提供:CHRISTIE’S IMAGES LTD. [2022]

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