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肖像画で描く香港の記憶 塵阿力の軌跡

肖像画は時間を留める行為だと塵阿力(ちんありき / アレックス・チャン)は語る。塵阿力(Alex Chan)は映画への愛情をもとに、銀幕の人物像を筆で再現してきた。

半世紀近く影像とデザインに関わってきた彼は、正統な美術教育は受けていない。2017年に長年閉まっていた画箱を開け、「塵阿力映畫」として作品発表を再開した。

作品の露出が増えるにつれ、映画会社の宣伝用ポスター制作や、香港電影金像獎(香港映画金像賞)関連の制作に携わる機会が生まれた。個人画集『星塵画報』も刊行している。

少年期と西環の記憶

塵阿力は西環(サイワン、香港島西部の地域)で育った。幼少期は石塘咀(Shek Tong Tsui、香港島の地区)や一時期住んだ躉船での生活が思い出の中心だ。

当時、地域には二三軒の映画館があり、父親に連れられてよく通ったという。映画館での体験が、その後の創作に深く影響を与えた。

映画館での記憶は彼の感性の核だと本人は述べる。映像が日常の一部として染み込み、それが肖像画制作の土壌になった。

「映画と私は決して切り離せない。」

映画を通じて培った視点が、人物の表情や仕草の観察につながった。塵阿力は「映画が与える表現を観察することが大事だ」と語る。

映画が育んだ肖像表現

彼は多数の映画登場人物を題材にしてきた。代表的な例として、《傾城之戀》(Rouge、1984)、《秋天的童話》(An Autumn’s Tale、1987)、《甜蜜蜜》(Comrades: Almost a Love Story、1996)などがある。

また、《玻璃之城》(Glass City、1997)や《幻愛》(Love, 2019)といった近年の作品まで、時代を横断して影響を受けた人物像を描いている。

肖像画制作にあたっては、単なる似顔絵以上の「表現」を目指すという。監督の演出、環境、台詞が俳優の表情を形作る過程を重視している。

塵阿力の肖像作品例1

制作方法と時間のかけ方

塵阿力は作品の画面比率を2.35:1に統一している。これは映画のワイドスクリーン比率であり、観る側に映画的な視覚体験を与えたいからだ。

制作の第一歩は資料収集だ。彼は書籍『星塵画報』で90の登場人物を描いたが、それらは八、九十本の映画から選ばれている。

理想の一瞬を切り取るため、単なる検索に頼らず映画を再視聴する。最良のモーメントを見つけ、それを「半秒」あるいは「一コマ」として捉える作業を重ねる。

塵阿力の制作風景

眼差しの重要性

彼が最も時間を費やすのは目の表現だという。「五官で人を構築する感覚は、大きな宇宙のようだ」。

似ているかどうかを超えて、内面を伝えることが彼の目標だ。見る者がその人物の持つ背景や時代を想起できるよう描く。

塵阿力の肖像作品例2

制作がもたらした出会いと展開

肖像画を描き続けた結果、思いがけない縁が生まれた。映画『逆流大叔』の監督、陳詠燊(チェン・ウォンサン)との出会いをきっかけに、香港電影金像獎の候補者名簿を描く仕事を請け負った。

さらにテレビ番組『導演·門』では、21人の監督に贈る21点の作品を三か月で制作した。実際に監督らと面会する機会もあり、創作が人脈を広げた。

塵阿力の肖像作品例3

ソーシャルメディアで作品を共有したことで、過去に描いた芸能人と直接つながることもあった。彼は創作を「長い糸」に例え、人と人を結ぶ力があると語る。

伝えたいことと今後の視点

塵阿力が最も望むことは、多くの人が作品を通じて時代の記憶を思い出すことだ。音楽や映像、文化の記憶と結びつくことに価値を見出している。

近年はパンデミックの影響で若い世代の俳優や監督に注目が集まった。彼はアートを通じて若手を応援し、香港の文化価値を広めたいと考えている。

塵阿力のポートレート制作例

「私の作品がきっかけで、誰かがある映画や歌に興味を持ってくれれば嬉しい」と塵阿力は語る。肖像画を媒介にした文化の伝達が、彼にとっての創作目的である。

塵阿力の作品と書籍『星塵画報』の一部

Executive Producer: Angus Mok
Producer: Mimi Kong
Interview & text: Ruby Yiu
Videographer: Andy Lee, Alvin Kong
Photographer: Ken Yeung
Video Editor: Andy Lee
Designer: Michael Choi

Location: 3birds Coworking Space
Special Thanks: 塵阿力(Alex Chan)

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