周殷廷(しゅういんてい / ヤン・ティン)は、21世紀の彩色社会の中で黒白の美を際立たせる人物である。技術進歩で色があふれる時代において、黒と白の表現はより純粋に研ぎ澄まされている。
色彩の多様化が進んだ現代社会では、もはや白黒テレビに戻ることはできない。しかし、黒白の美学はより集中し、強い存在感を放つ。常にAll Blackの装いで現れる周殷廷は、その対比のなかでひときわ目を引く。
黒を極めた佇まいを見ると、思わず「YT大哥」と呼びたくなる人もいるだろう。ここでは彼に黒白の裂け目を開いてもらい、彼自身の美学を探ることにした。

意外と運命の結びつき
「選択してこの道に踏み出すとき、終点は見えないことが多い」
この言葉は、型破りでスタイリッシュなYTの口から出た。見た目とのギャップが印象的である。

デビューから約10年、周殷廷は着実に自分の音楽世界を築いてきた。近年の楽曲は高い評価を得ており、ミュージックビデオがYouTubeのランキングで上位に入ったこともある。

「歌うことが好きだったが、歌う以外にも音楽に関わる道はある」
幼い頃から歌を好んだが、それが必ずしも歌手になる決意を意味しない。周殷廷は様々な可能性を見据えつつ、自分の道を探してきた。
デモテープを携えて毎日音楽会社の門を叩いた日々。拒絶もあった。最初のシングル〈Gonna Be Alright〉は大きな反響を得られず、表舞台での活動は一時停滞した。
黒と白の間には、無数の灰色が横たわっている。

過去の苦悩を振り返ると、彼の熱意と成長は励まされるが、本人は淡々と語る。「自分は最も難しい挑戦を選んだだけだ」と。
努力が必ずしも成功を保証しないことは承知のうえで、限界まで試す姿勢を貫いた。ある日、〈遲了悔改〉が広く受け入れられ、人気を一気に高めた。

彼はついに注目を浴びた。初のワンマンライブ『WHO IS YAN TING LIVE 2024』では「私はYTだ」と表明し、代表作を手にした。
台前と幕後
「創作は誰にとっても必要な行為だ」
彼はマズローの欲求段階説を引いて創作の必要性を語った。音楽だけでなく、映像や演出も手がける多才さが特徴だ。

彼は作詞作曲にとどまらず、監督やプロデュース、マーケティングまで担う。過去には吳雨霏の〈今夜煙花燦爛〉やGin Leeの〈幸福門〉などの監督を務めた。
創作の境界は曖昧である
円グラフで創作比率を分けるとどうなるかと問うと、彼はこう答えた。「丸一つで分界はない」と。歌を書くときに映像の構想が浮かぶこともあり、分けて考えられないという。

創作の源は人生の感受性にあると話す。観察、記憶、想像を通じて小さな光を集めることで、心の中で語りたいことが見つかるという。
「創作は無限の反復であり、忍耐の試練だ」
彼は初監督映画『雨夜之徒』を例に挙げた。脚本は七年近くかけて練り上げた作品である。書いては削り、書き直す苦痛を通して作品は完成へ近づいた。

彼が好むOne Takeの手法は、完璧を追い求める幼い自分への挑戦でもあった。やがて完璧でないことを受け入れる経験が、完結ではなく完全さへと導くという。
持ち前の落ち着きは、失うことを学んだ結果でもある。できる限りを尽くして天命を待つ姿勢が、彼の根底にある。
歌詞の一節に「再会した十五歳の自分は力尽き試みた、不敢去回望」とある。もし十五歳の自分に言葉をかけられるかと尋ねると、彼はこう答えた。「何も言わないだろう。彼は聞かないし、運命を変えるべきではない」
話が弾むうちに、彼は自然と説法めいた語りを始めた。話したいことが多いのだろう。
創作以外でも彼は積極的に交流する。実名でネット掲示板に参加したり、SNSでファンと直接交流したり、男子グループJFYTを結成したりしている。DSE受験生向けに無料公演を行ったこともある。

舞台と裏方、どちらが好きかと問うと、彼は両方を同時に楽しんでいると言った。「自分の背後から前方を見られる感覚が好きだ」と語る。
黒白の確信
「なぜ止まらず働けるかと問われれば、仕事を娯楽にしているからだ」
彼はそれを「福気」と呼んだ。一般に言うワークライフバランスではなく、仕事と生活の統合が彼のあり方だという。

白はあらゆる色を混ぜ合わせて作られるが、黒は混ざらない。周殷廷は多様な考えを吸収し、自分の色にしていく。そして世界に迎合することなく、自分を貫く。
多くの人が未来を約束できないとき、彼は臆せずに自分を語る。黒白への愛と創作への確信は揺るがない。

宇宙の星屑を見上げて、どう生きるべきかと問うと、彼はこう答えた。「好きなことを見つけ、充足を得られれば十分だ」と。向上心は持ち続けつつ、現在の一瞬を享受することが大事だと語った。
音楽が好きな人は彼の歌に惹かれるだろう。講義めいた語りを好む人は彼の言葉に耳を傾けるだろう。どの面も周殷廷の一部である。
「WHO IS YAN TING?」という問いに対して、九年を経た今、ステージに立つ彼自身が答えである。
写真撮影: Olivia Tsang / アートディレクション: Olivia Tsang & Mimi Kong / スタイリング: Mimi Kong(Yoanah Chanアシスト)/ インタビュー・文: Louyi Wong / ビデオ撮影: Alvin Kong & Matt / ビデオ編集: Alvin Kong / メイク: Carmen Chung / ヘア: Milk Chan / 時計・ジュエリー: Cartier / コスメ: M.A.C Cosmetics / 衣装: Burberry、Dolce & Gabbana、Fendi、Versace


