香港イラストを手がける何達鴻(か たつこう、John Ho)は、日本への移住を夢見て作品を描き続けている。
香港イラストの原点と「肉肉熊」
「私の作品は自分を表現する手段であり、生活体験がそのまま創作の源だ」と何達鴻は語る。雑誌のデザイナーから専業のイラストレーターに転身し、20年以上にわたり〈肉肉熊〉という愛らしい小熊のキャラクターを中心に創作を続けてきた。
肉肉熊は名前の通り丸くふくよかな姿が特徴で、淡い色合いと柔らかな筆致で日常の温度を伝える。可愛いものを見ると自分が幸せになるので、その気持ちを観る人にも届けたいというのが作家の思いだ。
作品にはもう一つの主要キャラクター花花貓(Floweri Cat)も登場し、二人の掛け合いで愛や郷愁を表現している。
香港の風景を描く意義
何達鴻は作品に香港の街角を頻繁に取り入れている。雪糕車や公屋、維多利亜ハーバーの海辺などがモチーフで、これらは香港の生活感を伝える重要な要素である。
公屋は各区に点在し、一つ一つの窓が一家族の物語を示すと彼は話す。特に深水埗(シャムシュイポー、Sham Shui Po)は市場や生活の匂いが色濃く残る場所として作家のお気に入りである。

彼は手描きの線を重視し、デジタルだけでは出せない「人情味」を表現法として守っている。古い書体や建築に惹かれるのも、そうした個性の表現を大切にする姿勢からだ。
作品と刊行物
これまでに発表した書籍には『忘記旅行』『蜂蜜綠茶』『少年事件』『東京肉肉 – 日本留学物語』『香港散步日常』『橫濱散步日常』などがある。いずれも大人向けの絵本形式で、自身の成長や旅の記録をやさしい絵と言葉で綴っている。
日本での生活は創作に新たな視点を与えたという。桜の季節に写生をするなど、現地での経験が作品の背景や色彩に反映されている。

移住後の日常と創作
日本での暮らしは当初の新鮮さとともに、静かな個人時間を作る場でもあった。何達鴻はラーメン店で働いた経験や日本語学習を通じて得た小さな発見を作品に落とし込んでいる。
また、海外で自分の本を図書館で見つけた瞬間を「成功の実感」と語るなど、活動は香港・台湾・日本で評価を得ている。最近はM+ Shopでの作品販売にも招かれ、反響も良好である。

香港と日本、二つの生活圏
香港は国際金融都市であり、また独自の地域文化を持つ都市である。訪れる人にとって日本は近く親しみやすい存在だが、住むことで見える景色や時間の流れは変わる。
「新しい場所での経験が創作の源になる」と彼は言う。日本で過ごす時間は内省と制作の両方を深める機会になっている。

取材の最後に、彼は香港の食を一番懐かしむと答えた。牛腩河や辣椒油が恋しいという。それでも移住は「夢の一部が叶った」出来事であり、後悔はないと語った。
クレジット
エグゼクティブプロデューサー:Angus Mok
プロデューサー:Mimi Kong
取材・編集:Louyi Wong
撮影(映像):Zenus Ng、Kason Tam
映像編集:Zenus Ng
写真撮影:Ken Yeung


