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關錦鵬の映画論と香港への想い

關錦鵬(かん・きんほう / スタンリー・クワン)は映画監督として四十年以上にわたり香港映画界に多くの名作を残してきた。女性の感情を繊細に描く作風で知られ、『胭脂扣(Rouge、1987年)』『阮玲玉(Center Stage、1991年)』『藍宇(Lan Yu、2001年)』などが代表作である。

1980年代の香港映画黄金期には、アクションやコメディ作品が人気を博したが、關錦鵬はそれらの定型から距離を置き、人物を中心に据えた映画作りを一貫して行ってきた。男女の情、同性愛の物語を含めて、どの登場人物も丁寧に造形されている。

彼の作品は国際映画祭でも評価され、ベルリンやヴェネチアなどに出品されたほか、金馬獎や香港電影金像獎で受賞やノミネートを重ねた。俳優たちの名演が幾度となく映画史に刻まれている。

近年は複数の代表作が4K修復され、劇場での再上映が行われている。今回はその再上映を機に、本企画で關錦鵬に長年の映画観と香港への思いを聞いた。

「作家性は雌雄を併せ持つ」

關錦鵬は自身について「監督という仕事は多くの場合、雌雄同体である」と語る。1996年に英国映画協会の中国映画百年ドキュメンタリーで陳凱歌(ちん かいか / チェン・カイコー)と語り合った際にも同様の考えを示したという。

彼は自身の性的指向を当時まだ公にしていなかったが、その内面が女性の繊細な感受性を映画に反映させていると述べる。自身の感覚を映画表現に投じる一方で、個と作品の距離も保つことが重要だと語った。

關錦鵬の横顔

人物を最優先する脚本作り

關錦鵬は初監督作『女人心』から一貫して「人物行先」を重視している。登場人物が成立してはじめて、その人物同士の衝突や恋愛が説得力を持つと考える。

例えば『胭脂扣(Rouge、1987年)』は李碧華(り へきか / リー・ピーワー)の原作を基にしているが、關錦鵬と脚本家の邱剛健(きゅう ごうけん / チウ・コンキーン)は人物造形に多くの労力を割いた。登場人物の背景や関係性を徹底的に掘ることで、単なる怪談ではなく純愛の物語として観客に届く作品となった。

『女人心』劇照
『女人心』劇照

演出と俳優への信頼

關錦鵬は現場で俳優と率直に向き合う。自らの経験や感情を伝えつつ、俳優本人の内面にある感情を表出させるよう促すという。演出は一方的な指示ではなく対話だと述べる。

『藍宇(Lan Yu、2001年)』の例では、当初の配役に疑問が出たが、關錦鵬は俳優の可能性を信じ、現場での共鳴を重視した。準備段階で俳優が同じホテルに滞在し、共同生活のような環境で役作りを進めたという。

『胭脂扣』劇照
『胭脂扣』劇照

性別を超えた「人間」の描写

關錦鵬は性別表現にこだわらず、まずは一人の個人としての感情を描くことを重視する。同性同士の恋愛も異性間の恋愛も、本質は「二人の人間の関係」であると語る。

そのため彼の作品では、性別による先入観を排して登場人物を描くことが多い。観客は性別を超えて人物の感情に引き込まれるように演出されている。

『藍宇』劇照
『藍宇』劇照

教育と世代継承

關錦鵬は近年、香港城市大學で教鞭を執り、若手監督の育成にも力を注いでいる。最新作は2018年の『八個女人一台戲』である。

学生と俳優の違いについて彼は「求知欲」が共通点だと語る。学生にはまず「why」を考えさせ、その後で「how」を探る姿勢を促しているという。自らの作風を模倣させるのではなく、個々の感覚を見つけさせることが教育の目的だと述べた。

『長恨歌』劇照
『長恨歌』劇照

香港という「場」への視線

關錦鵬は地元香港を創作の核と位置づける。時代や環境は変わっても、都市が与える感覚や風景を映画で記録することに価値を見いだしている。

かつての映画製作の隆盛期は失われたが、低予算でも今の香港を描く意義は大きいと述べる。若い監督には都市の感覚を手放さず表現してほしいと呼びかけた。

關錦鵬と香港の風景

上映された4K修復版に若い世代が足を運んでいることに關錦鵬は喜びを示した。「映画が残り、次の世代に届くことに意味がある」と語り、作品を通じて時代の記憶をつなぐ姿勢を示した。

光と影の長い流れの中で、關錦鵬が描き続けてきた人情や都市への眼差しは、世代を超えて観客の心に残り続けるだろう。


Executive Producer: Angus Mok
Producer: Vicky Wai
Editor: Ruby Yiu
Videography: Andy Lee, Angus Chau
Photography: Angus Chau
Video Editor: Andy Lee
Designer: Edwina Chan
Special Thanks: Stanley Kwan ; Golden Scene Co. Ltd.

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