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含蓄の創作と新刊『於是我們擁有了失去』

含蓄(がんちく / ハムチュク、Ricky Luk)は近年、都市の隠れた感情を絵と言葉で掬い上げている。

回顧過去数年、社会や人の在り方に静かな変化が生じた。含蓄の作品はそうした変化を背景に、個人の内面を静かに可視化する。

元は建築家だった彼は2014年に職を離れ、以降は創作に専念している。含蓄は市井の物語を集め、短い線と短文で情感を表す。

これまで刊行した絵本に《如果我們只有相遇不會重逢》《我不要在孤單中死去》《累倒就躺著不要動》などがあり、今年7月に最新作《於是我們擁有了失去》を発表した。

本企画では〈藝城遊記〉のゲストとして含蓄を招き、都市を歩きながら創作の源泉と作品化の過程を聞いた。

「当初、含蓄という役割で双方向の対話を促したかった」

建築からイラストへ転身した経緯について、含蓄は社会に対する諦念がきっかけだと語った。彼は2014年の不透明な時代に自問し、絵を描く道を選んだという。

建築とイラストは異分野に見えて共通点がある。観察し、それを形にする作業という点であると彼は説明した。

含蓄の代表作イメージ1

彼の象徴的なキャラクターは「面具人(マスク人)」。個の属性を消し、読む人が自分を投影できる余白を残すためだという。

面具を通して表情や背後の物語を想像させる。含蓄は制作時にあえて余白を残す手法を貫いている。

最近は個展の準備も進めている。変化を点検し、自身の創作の移り変わりを確かめる場にしたいと話した。

含蓄の作品イメージ2

「出会いのあと、物事は過ぎ去っていく」

他人の物語を集める作業は情緒的な負荷が伴う。含蓄は自分を「物語の主人公ではない」と位置付け、肩の力を抜いて聴くと述べた。

含蓄が語る様子の写真

市井で行った交換会では90人ほどが順に話をした。聞き手としての立ち位置を明確にすることで、彼は創作に必要な距離感を保っている。

含蓄の作品イメージ3

「離別を主題にするのは非常に難しい」

最新作《於是我們擁有了失去》は、離別という重い主題を集めた一冊だ。含蓄はその難しさを率直に語った。

『於是我們擁有了失去』の表紙イメージ

収録された物語は移民、別離、服役、死別など多岐にわたる。全てに共通するのは「終わりではなく続き」であるという含蓄の視点だ。

彼は「失うことは受け入れる過程だ」と述べた。最後にそれを《擁有》する感覚が生まれると説明した。

含蓄の作品イメージ4

聞かれた人が「聞かれた」と感じることが創作の成功

出版後、含蓄は七回の朗読会を行った。彼にとってそれは書物と読者をつなぐ補完の場である。

含蓄の朗読会の様子イメージ

最も心に残る話の一つは《樹》。二十年以上住んだ家を離れる女性が、庭の老木に抱きつき泣く場面だ。含蓄はそれが離別の長い軌跡を象徴すると語った。

別の話《宣言》は、離れる人と残る人がそれぞれの信念で前に進む様を描く。含蓄は分離の先に再会の可能性を置いた。

含蓄の作品イメージ5

本は左右で黒と白に分かれる装丁だ。左は「留まる」、右は「去る」を示し、閉じると再び出会う寓意が生まれると含蓄は述べた。

「示弱することを許す作品でありたい」

彼の制作は常にこの街に根差す人々の生活を見つめてきた。含蓄は2014年以降、人々がつながっていることに気付いたと話す。

含蓄の作品イメージ6

社会的な出来事が共有される中、正の感情は語られやすいが、負の感情は口にしにくい。含蓄はまず自身の無力さを認めることが重要だという。

「これからも香港の物語を集める」

今回のテーマで多くの移民の話を聞き、去るか留まるかという問いに向き合った。含蓄は自身が香港人であることを簡単に捨てられないと明かした。

含蓄の作品イメージ7

旅先で暮らす形を取りつつ、様々な土地の香港人の物語を集めていくつもりだという。創作の重心は今後も「日常」にあると話した。

含蓄の作品イメージ8

失うことが重すぎるなら、それと共存する術を学ぶしかない。含蓄は静かに読者へそう語りかけた。

最後に読者へ向けた言葉を尋ねると、彼は自身を「伴走者」と表現した。絵と言葉で誰かと道を半ばでも共にすることができれば幸いだという。

エグゼクティブプロデューサー: Angus Mok
取材・文: Ruby Yiu
撮影: Andy Lee, Kason Tam
写真: Kris To
編集: Andy Lee
デザイン: Michael Choi
ロケーション: Hiding Place
Special Thanks: HUMCHUK

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