怪獣アートの焦点は、葉信泓(ようしんこう / アー・レイ)だ。
瘦削な体つきで童趣を残す葉信泓は、ユーモアを創作の原動力に変える作家である。立体の可愛い怪獣を手で捏ね、水墨の筆致で別の表情を生む作品群で知られる。
台湾芸術大学の水墨専攻を卒業後、葉は当初は少女を描くイラストレーターとして活動した。だが生活は厳しく、29歳で出した公仔作品が2005年のデザイナーズトイ大会で金賞を受けると、作風と制作の転機を迎えた。

怪獣アートとしての出発
当時の香港のフィギュアブーム、特に劉建文(Michael Lau)の影響は大きかった。葉は「公仔で生計が立てられるのか」と衝撃を受けたと語る。
卒業後は紙粘土で立体制作を始め、初出品で金賞を得た。そこから紙粘土は陶土へ、さらに銅へと素材と表現が広がっていった。

素材と技法で変わる表情
陶土は温度と個性を持つ素材だと葉は言う。釉薬の濃淡や焼成温度で表情が変わるため、仕上がりは常に予測不能である。
葉は水墨の筆法を陶に応用する。海綿やナイフで釉を削り、複数の白を重ねて透明感を出す手法を好む。

光沢のある工業的な仕上がりは玩具に近く、葉は生気を感じにくいとして避ける。複雑なテクスチャーで生物らしさを引き出すことを重視する。
表現の拡張と大型化
立体表現の追求は、作品の「体積」欲求へとつながった。2021年の屏東(ピンドン、台湾南部)の看海美術館での個展『春江獸月夜』では、大型の吹き袋作品が屋根に乗せられ注目を集めた。

銅彫は重量と耐候性を得るための選択でもある。化学薬剤で腐食させ酸化を待ち、最後に蝋をかけて色を固定する工程は危険も伴うが、葉はその過程に喜びを見出している。

水墨へ戻る自由
一方で葉は水墨表現にも立ち戻った。教育による枠組みから解放されたことで、「怪獣の水墨感」を見出したという。
紙を机に置き、墨を磨る作業から始める。深夜の静けさの中で筆を走らせ、瞬間的な状態を作品に留める作業が彼には合っている。

作品に込めるメッセージ
葉は怪獣を通じて、社会で受け入れられにくい人々や自分自身の欲望を語る。制作は自己表現であり、同時に社会への問いかけである。
「公的な注目を得るまでは暗がりにいた怪獣が、やがて光の前に立つ」と葉は語る。富邦藝術基金會(Fubon Art Foundation)からの招請で個展を開いたことが転機になった。

秘密基地と未来の計画
葉は基隆(キールン、台湾北部の港町)近郊に「怪獣秘密基地」と呼ぶ制作拠点を構える。霧と雨が多い環境が、彼の理想する怪獣の舞台に合うという。
将来的には屋外展示にも耐える作品群で、自身の美術館設立を目指す。怪獣アートは今後も素材やスケールを変えながら進化していくだろう。

短い取材時間の中でも、葉の持つ幼児的な遊び心と真摯な制作姿勢が伝わった。作品の根底にあるのは「まず自分が楽しいこと」だという。
Producer: Mimi Kong
Interview & text: Kary Poon
Photographer: Wei
Video Edit: Kason Tam & Alvin Kong
Design: Alvin Kong


