竹工芸は香港の生活に深く根ざした素材である。街角の竹棚や茶樓の点心籠、家庭の涼蓆など、日常の至る所に竹の痕跡が見られる。
最近、觀塘(クン・トン、Kwun Tong)を歩いていると、一帯を覆うような大きな竹の造形に目を奪われた。説明板によれば、その作品は 「浪.岸」と呼ばれ、竹ブランドの「二回」が制作したという。
この竹の波のような造形を手がけたのは、主理人の丁科竣(てい・かしゅん、Angus)だという。今回の取材では、彼に制作の経緯と竹に向き合う姿勢を聞いた。

第一回|異なる「竹」の感覚
丁科竣(てい・かしゅん、Angus)は「二回」を立ち上げて6年になる。彼は主に竹細工を手掛けている。
もともと室内と映画の美術をしていた彼が、2018年に竹家具の仕事を受けたことが転機だった。そこでの出来栄えに納得がいかず、自分で作ってみようと決めたという。

最初に作ったのは家具でも日用品でもなく、竹のバッグだった。数か月を費やし、資料を読み、道具を揃え、日本の京都まで竹芸人を訪ねて学んだ。
竹工芸を知る過程
竹は天然素材で変化するため、限界と特性を理解しなければならないと彼は言う。用途に応じて適した段階の竹材を使う必要があるからだ。
香港の竹製品は漁業や農業の歴史と結びつく。『香港竹類誌』によれば香港には61種の竹類が記録されており、素材としての豊富さがうかがえる。

現代では竹の機能性が見過ごされ、芸術的価値や精緻さが広く伝わっていない。丁はその認識を変えたいと考えている。
一回生、二回熟
竹を植物から工芸品へと加工する工程は多く、刮青、対開、劈薄、定幅、修厚、倒角などの手順を経る。編み方も多様で、構造を固める内層と装飾の外層に分かれる。

卓上の作品を見ながら丁はこう漏らした。「多くの失敗を重ねて一つの完成品が生まれる」と。

例えば小さな花籠一つに3か月を費やし、何度もやり直したという。制作は技術だけでなく、表現したい意味を明確にする作業でもある。
知竹・満たされぬ探究心
丁は日本の職人精神から多くを学んだという。師弟制や規範を重んじ、時間をかけて技を磨く姿勢が印象的だったと述べる。

『二回』という名称は、編む過程で少なくとも二層の模様を重ねる必要があることに由来する。繰り返しが構造を支えるという考えだ。

観塘での〈竹〉制作が問いかけるもの
近年、丁はアートピース制作に重心を移している。黄竹坑(ウォンチャックハン、Wong Chuk Hang)にある彼の作業場には未処理の竹材が積まれ、制作中の品が並ぶ。

とりわけ観塘に設置された[UNVERIFIED: 浪.岸]は、市区重建局(Urban Renewal Authority、URA)の協力で公共空間に置かれた作品だ。
丁はこの場所が元々は海岸線の縁だったことに着目し、海の記憶を再現する意図で大規模に竹を用いたと説明する。制作は屋外での大規模作業であり、天候や現場条件が最大の難題だったという。

地域の反応は世代で分かれた。年配層は竹に親しみを覚え、若い世代は素材自体に馴染みが薄い。丁はこうした反応を面白い現象だと受け止めている。
また丁は、再開発に対する不安についても言及した。再建の是非よりも、良いコミュニティをどう設計するかが重要だと語った。

作品と生活の接点を探す
丁の作品は伝統技術の再解釈だ。花籠や茶漏、コーヒーフィルターなど、実用と美を兼ね備えた作品を多数制作している。

彼はワークショップを開催し、竹結びやカードケースなど携帯できる小物のデザインも手掛ける。ファッションブランドのGucciやCasa LOEWE Hong Kongが作品を所蔵したこともある。

それでも丁は自らをまだ未熟だと考えている。「成功だとは思っていない。工芸の追求は続く」と彼は語った。

竹工芸は時間をかけて育つ。丁もまた自然に従い、段階を踏んで成長していくという姿勢を崩さない。


